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現代
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と、そんな風に希美と別れたもんだから、謂われもない噂が学校で流された。
彼女と自称宇宙人を天秤にかけて、自称宇宙人をとったとか、戸野部はホモだとか、彼女の裸を見ても勃たない不能野郎だとか。
一体、誰がこんな噂を流しているのかと考えると悲しくなってくる。

しかし、そんな噂をクラスメートの人間は誰一人信用していなかったのが唯一の救いだった。クラスの人間は、前日の朝の希美と自称宇宙人のやり取りを見ているだけに、希美に対する印象が悪かった。だから今回の件も、希美の方に難があったんだろうという見解のようだ。

一方で、やはりというか希美のクラスの人間からは覚えが悪い。
まあ、希美がクラスでもアイドルのような立ち位置であったから余計だろう。
それ以外の生徒にとっては真相などどうでも良く、ただ面白おかしく噂を吹聴しているような節があった。

因みに噂に一枚噛んでいる自称宇宙人は、平常通り、それに対して何のリアクションを示すことはなかった。

「いやーでも、戸野部、別れて正解だって」

「なんかあの子病んでるじゃん?昨日、突然教室に来たときは驚いたよ」

クラスの女子生徒にこんな風に慰められている俺に対し、自称宇宙人が言った言葉は一言。

「戸野部、彼女と別れてたのか?」

何で今の今まで気付かなかったのだろうか、この観察者様は。
俺を観察しているのではないのか、本当に。自称宇宙人にとって、俺に対する興味ってそんなものなのかと、がっくりしてしまう。

「それにしても、不運な噂を流されたな」

「相手が舘向だから、何とも信憑性がおりてきちまうしな」

クラスの男子生徒からは同情の言葉があがる。
そりゃ、自分がホモだという噂を流されたらゾッとするだろう。

「いや、逆に相手が舘向で良かったと言うべきか……」

「あー確かに。あんたみたいなブス面が相手だと、好みまで疑われちゃうもんね」

「うんうん、っておい!!!!」

クラスメートのそんな馬鹿げたやり取りを聞き流しつつ、俺は自称宇宙人に視線を向ける。

アイドル顔負けの整った容姿。どこか儚げなそんな姿は、そこらの女子生徒なんて比べものにならないほど可愛らしい。こんな喧騒の中でも、その中に混ざらず一人黙って本を読んでいる浮世離れしているその姿が、ミステリアスさも加わらせ、一層自称宇宙人を魅力的な存在に仕上げていた。
自分のことだが、確かに自称宇宙人相手にホモなんて噂を流された日には、真実味を帯びてしまうのは仕方ないだろう。増してや、自称宇宙人が俺と以外に話そうとしないという事実も加わって、尚その噂の信憑性を高めている。

「でもまあ、もう直ぐ夏休みじゃん?それで少しは噂も納まるって」

そう言えば、もう直ぐ夏休みだった。流石に両親の下に顔を見せに行かなきゃならないか。ゴールデンウイークの時も行かなかったし。でもそうなると、自称宇宙人はどうするんだろうか。何日も俺のいない部屋で過ごすのだろうか。自称宇宙人のことだから自分でご飯を作ったりはしないだろう。一人じゃ、飲まず食わずで死ぬぞ……?

「で、二人は本当にどこまでいってるの?」

女子生徒から突如落とされた大きな爆弾に、俺の思考は一瞬にして吹き飛んだ。
今が飯時でなくて本当に良かった。口の中に何かを入れていたら、絶対吹き出す自信があった。






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あきゅろす。
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